私は京都府警察で署長を、また、本部でも課長、参事官をしておりました。自分の命が危ないような経験もしました。本当はその話をしたいのですが、今日はマナーを中心にお話します。
なぜ、この場で皆さんにマナーの話をするのか、それは先程重信先生がおっしゃったように、企業でもどこでも悪いことをする人がいるのです。悪いことをすると犯罪者になります。それが発覚すると警察がその人を逮捕します。事件として捜査されます。ところが捕まえる機関・警察が不祥事を起こすと世間から厳しい目で見られます。従いまして私は現職中に警察官の不祥事・事故防止ということに気を使って仕事をしていました。だけどなかなかうまくいきませんでした。
ところが私が警察を退職してからマナーを勉強したのです。そこで初めて気がついたことは、マナーを勉強すればもっと不祥事が少なくなったではないかと。なぜか。コンプライアンスというのは法律に違反することなどですが、その法律に違反するもっと前段のマナーを勉強すれば、いろんなトラブルが少なくなるのです。それについては今日は簡単にお話をします。
いろんな法律によって社会の中は規制されている。その法律の中で皆さんが人生を送る。人生を車の運転に例えた場合、さっき重信先生がおっしゃったように、きちんと運転をしなければ崖から落ちますよ。それから、いろんな事件事故が起きる。運転をすればいろんなヒヤリハットが起きる。この狭い道を、人生という難しい道を運転していくためには、細心の注意が必要なのです。注意しているだけでは駄目なのです。人間関係を上手くして人に好かれ、そして自分の主張もする。そういう上手な人生を歩まなければならない。その時に役立つのがマナーなのです。
マナーの基本は挨拶なのですね。私は柔道部のOBなのですが、柔道の場合は礼で始まり礼で終わると言われていますけど、どんなスポーツでも礼儀作法と挨拶はありますね。それから皆さんが先輩・後輩と同様、監督と出会ったときも必ず挨拶をします。挨拶そのものは非常に奥深いものなんですね。それを勉強しましょう。
お辞儀というのは、日本人特有の挨拶です。クリントン元米国大統領がお辞儀をしているというのを見たことがありますか。これ(スクリーンの写真)は、その写真です。2012年ノースキャロライナ州で行われた民主党大会で、ステージに上がるオバマ大統領をお辞儀をして向かえるクリントン元大統領です。この元大統領のお辞儀は上手なお辞儀です。背中の角度45度に近いですね。これは最敬礼のお辞儀です。腰から頭まで一直線になっていますね。皆さん気をつけてほしいのは、「首だけお辞儀」というのがあるでしょう。それから背中だけを曲げるお辞儀、これは駄目なんですね。クリントン元大統領のように、腰から肩、頭を一直線にしてのお辞儀。我々日本人は負けないように、日本人として綺麗なお辞儀ができる知識を体験を積んでほしいですね。
同じお辞儀というと、サッカーの長友選手はゴールを決めるとお辞儀をするということで有名になりました。なぜお辞儀をするのか。外国人の選手ならシャツを脱いで振り回しますよね。だけど彼はお辞儀をする。これは感謝の気持ちを表しているのです。「私がゴールできたのは、チームメートのお陰です」ということですね。チームメートも一緒にお辞儀をしていました。
これ(スクリーンの写真)はヨーロッパの女性がお辞儀は素晴らしいということで、お辞儀をして写真に撮ってネットに投稿したものです。長友選手が広めたサムライの心ということです。自己主張をするのも大事ですけど、それよりも相手に敬意を表するというお辞儀です。お互いが敬意を表する。そうなると思いやりができます。こういうことが日本人としての素晴らしさ。お辞儀はいろんな意味で大切なのですね。
マナーの基本であるお辞儀を綺麗にしようと思えば、基本の姿勢が大事です。皆さんもスポーツの時に基本の姿勢をとる時があると思うのですが、あまり意識したことがないと思います。まず背筋を伸ばして視線は真っ直ぐ前を向く、あごを若干引き気味にします。肩の力を吹いて両腕をゆったりさせて胸襟を広げます。肩甲骨を接近させて、へその下3センチのところの丹田に力を入れると腰回りが引き締まります。これは後で皆さんにやってもらいます。
それからお辞儀でも三つの種類があります。
一番軽いお辞儀、これを会釈といいます。角度は15度、リズムは1・2・3でお辞儀をして1・2・3で戻ります。これは「お早うございます」「失礼します」というような簡単な挨拶ですね。
2つ目は敬礼。これは30度、ビジネスシーンでよく使う「ありがとうございます」「いらっしゃいませ」。
3つ目は最敬礼。これは一番丁寧なお辞儀です。角度は45度。冠婚葬祭、結婚式の時などの「おめでとうございます」などですね。日本の場合はこれに加えて同じ最敬礼でも75度というものがあります。これはコンプライアンス違反があった時の会社の社長とか役員が謝る時に「誠に申し訳ございません」とずっと頭を下げている時のものです。
なぜこのように差をつけるのか、これは相手によって、その時の状況によって自分の気持ちをお辞儀で表す。従ってそれは、親愛、感謝の気持ち、お祝いを表す気持ち、そして謝罪をする場合、いろいろありますが、それを上手に使い分けるのです。なぜそういうふうにするのか。私はこんなに感謝しています。感謝の気持ちを表すならば、深くお辞儀をして敬意を表すのです。
こんにちは、お早うございますという挨拶は、いつもしていると思うのですけど、価値観や習慣の違う人、特に外国人なんかは全然違うのですね。社会ではいろんな人がいますから、そこで共通のルールが決まります。相手を思いやる気持ち、相手を尊重する気持ちを持とうとする。これは一番大切で、人と人が出会った時に作法が出会いここで挨拶をするのですね。それから一日に何人もの人に出会えば、出会った数だけ挨拶をすることがあると思うのです。従いまして挨拶というのは非常に大切です。
日常生活の中で挨拶をどのようにしていくのか。親子の関係、友達の関係もあるでしょう。それから学校へ来ると友人、また先生との関係もあるでしょう。お世話していただいている職員との関係、お昼ご飯を食べる時、いただきます、ごちそうさまでした、と言いますね。それからクラブの仲間、久しい仲間、監督、コーチ、そして先輩との挨拶、後輩との挨拶、アルバイトに行っている人はアルバイト先での挨拶、いろんな挨拶があると思います。あと、冠婚葬祭、就職、寝る時も「お休みなさい」と挨拶する。このように日常生活の中でいろんな挨拶がありますので、相手によって角度、リズム、そして声も違ってくるのです。立命館大学の学生として、基本の姿勢とお辞儀が大切、これだけは身につけていただきたいと思います。
実際に挨拶をする時は、大切なのは相手の目を見ると言うことです。これはアイコンタクト、それに笑顔が大切ですね。その時には口角を上げる。口角を上げると健康にも良い。この間テレビでも放送していましたが、笑顔で走ると陸上選手のタイムが伸びていました。スポーツも笑顔ですると、力が抜けるというのを実験でやって成果を出していました。皆さんも笑顔でスポーツをしましょう。
それから「語先後礼」というものがあります。これはお早うございますと言ってからお辞儀をするのですね。同時にすると「お早うございます」と言った時には下を向いていますよね。「語先後礼」というのは、言葉を先に発して後からお辞儀をする。これが正式なお辞儀です。そうしないと相手の表情も見れませんし、アイコンタクトもとれません。こちらの表情も見てもらえます。「語先後礼」という言葉だけでも覚えておいてください。
それではロールプレーイングをやって終わりにするので、皆さんその場に立ってください。
背筋を伸ばしてください。視線は真っ直ぐ正面を見てください。若干あごを引きます。方の力を抜きます。腕をゆったりさせて、胸襟を開いて肩甲骨を合わせるような気持ちで丹田に力を入れます。
会釈をします。角度は15度、リズムは1・2・3 「お早うございます」
敬礼をします。角度は30度、リズムは5です。「ありがとうございます」
最敬礼は45度、リズムは7です。「おめでとうございます」
最後に挨拶をして終わりましょう。「ありがとうございました」
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