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第9回「学生スポーツとコンプライアンス」講演会 

  
小林 雅義
元・京都府警察刑事
 2016年(平成28年)
9月17日(土)
立命館大学衣笠キャンパス 

学生スポーツ選手の不祥事とその予防策〜刑事事件を中心として〜 
 はじめに
 私は京都府警察に約40年間勤めてまいりました。その間の30年間は刑事で、知能犯捜査と暴力団取締りをやっておりました。従いまして、本日のお話しの内容「なぜ学生スポーツの不祥事が問題になるのか」ということをお話しさせていただいた後、最近よく問題になっています個別の事犯についてお話しをさせていただきたいと思います。 
  1 なぜ学生スポーツの不祥事が問題となるのか
 (1) 大学スポーツ選手は一般学生に比べて不祥事が多いか

 このグラフは刑法犯の検挙率を年齢別と男女別に分けたものです。棒グラフの方は検挙人員、折れ線グラフの方は10万人当たりの検挙者の数字なのですけど、男性の方は20歳未満は1,136人、20歳になりましても534人。若いほど検挙の数が多い。女性の方は20歳未満ですと202人ということで多いのですけど、20歳をすぎますと95人になりまして、以降100人を越えることはないということで、この数字を見ていただいたらわかりますように、若い男性は刑法犯を犯す確立が高いということが言えると思います。 
    この中でどれくらいの大学生が検挙されているか。昨年の京都府警察で検挙された大学生の人数は326人でした。これを検挙者率にすると、京都の学生さんは16万人余りと聞いていますが、大学生10万人当たり200人検挙されているということになります。京都府の14歳から24歳の若い人たちは10万人当たり486人検挙されていますで、若年層の中でも大学生が事件を起こすというのは2.5分の1ということで、大学生は実は優秀なんです。
 その内、体育会の学生がどれくらい犯罪を犯すかというと、実は警察ではそういう統計はとっていません。何かがあると、「また体育会か」という話になっていますけど、そんなのは全くの出鱈目なのですね。私も40年間余り警察で勤務しましたけど、肌で感じてそういうことはないと断言できると思います。
   (2) 大学スポーツ選手の不祥事が大きく取り上げられる理由
  では、なぜ大学スポーツの不祥事が問題となるのか。私なりに勝手に考えてみたのですが、1つは大学のスポーツ選手となりますと、オリンピック代表や世界選手権の代表、JAPANを背負って日の丸を背負って行くわけです。立命館大学のOB・OGの方も5人位リオ・オリンピックに出場したとお聞きしました。また、名門・強豪校と言われる運動部は大学の広告塔ですから大学の名前を背負っている。また、運動部員は明るく爽やかで正義感が強いというイメージを一般の人は勝手に持っています。それと高校の時に実績にあった選手、推薦入学があるとか、就職が非常に有利になるとかということで優遇されているのです。そうすると世間の人からどういう風に見られるか。羨望、やっかみ、嫉妬、反感。もちろんみんなではないですが、中にはそういう風に思う人がいるのです。そうすると何か不祥事があって、そこでひた隠しにしていても必ずネットに書き込まれます。あるいは匿名の通報があります。どうなるか。メディアがついてきます。それが金メダリストであったり、強豪校のクラブが組織的にやっていたということになると、ニュースバリューが高いのです。警察ではたとえば小林という立命館大学の3回生の男を逮捕したとしても、住所は北区衣笠くらいまでしか発表しないし、大学名も発表しません。でもわかるのですね。インターネットを調べるとブログ、ホームページ、フェイスブックなどがあります。よく立命館大学の何部に入っていますとフェイスブックに書いている人がいますよね。内緒にしていても見つかります。
    (3) 大学スポーツ部の過去の不祥事
 これは大学スポーツの近年の不祥事ですけど、いろいろあります。集団強姦、集団スリ、大麻をやっていた、あるいは個人的な事件でも箱根駅伝の強豪校の選手が痴漢、強制わいせつをしたというのもとりあげています。
    (4) 大学スポーツ部の不祥事と責任
 大学スポーツの不祥事があるとどうなるのか。
 刑事上の責任です。成人ですと刑罰の適用があります。懲役、禁固、罰金。京都の国立大学のアメフト部の集団強姦事件がありましたけど、主犯の人は懲役4年半の実刑判決を受けました。禁固以上の刑に処せられますと、国家試験が受けられない、あるいは公務員になれないというような欠格事項に該当することがありますので、非常に大変な問題になります。未成年も刑罰の対象にもなりますが、仮に刑罰を科さられなくても少年院に送致されたりとか、あるいは保護監察にされることもあります。
 次ぎに民事上の責任ですけど、これは相手やその遺族に和解金、示談金、損害賠償金を払わなければならない。何千万円になることもありますし、時には1億円を越えることもあるのです。それを払うことができない場合は親が払うのですが、私みたいな普通のサラリーマンですと、家を売っても払えないということで、破産するしかない。大変な問題となります。
 行政上の責任。一番身近なのは運転免許の停止、取消しです。
 それから社会的責任。個人は退学処分や停学処分になります。
 それから組織の責任です。一番厳しいのは廃部です。それから無期限活動停止、部長、監督が離任された例もありますし、京都の国立大学で体育会の集団強姦があった時は学長がお辞めになったのです。大変な問題になりました。そうしますと、自分だけでなく人の夢までも壊してしまうということになります。
 今までの話をまとめますと、大学のスポーツ選手の不祥事は、通常の大学生よりも多いというわけではありませんが、世論すなわちメディアに一般の学生よりも大きく取り上げられ、その結果、自分だけでなく、学校、クラブ全体に迷惑をかけるということになるのです。皆さんは立命館大学に入学されて体育会に所属されたかぎりは、何かがあればそういう立場に自分たちがあるんだということをよく自覚していただきたい。それが嫌ならば体育会を辞めるということなんです。
   
2 薬物事犯
 これから薬物事案について、少しお話しをさせていただきたいと思います。元巨人軍の清原選手が捕まったのは非常にショックに思うのですけど、皆さん、そんな話は自分たちに関係ないと思っておられるかもしれません。ネットで見せていただいたのですが、立命館大学等関西4大学が毎年、薬物に対する意識調査をしているのです。2万3,000人から回答がありまして、薬物を勧められた経験があると答えた方が1.6%、人数にすると370人になります。それから薬物をやっている人を知っていると答えた方が3.5%、人数にすると800人いるということです。この800人のうちシンナーとかじゃなくて半分以上が、覚せい剤とか麻薬の使用者を知っているというショッキングな回答がありました。
    最初に禁止薬物にはどんなものがあるか。
  まず覚せい剤です。左の方が結晶型の覚せい剤で、シャブ、エス、スピード等と呼ばれていますが、これは注射で使います。それから右の方は錠剤型の覚せい剤で「ヤーバ」というのですけど、実はタイではトラックの運転手の眠気さましにずっと使われていまして、ガソリンスタンドで売られていました。今では禁止になっています。それから日本でも戦前戦後にかけて、眠気覚ましに「ヒロポン」という大日本製薬が出している薬がありました。これも普通に売られていたのですが、昭和26年に覚せい剤取締法が施行されまして、それ以降、禁止薬物になりました。ギリシャ語で労働を愛する「ヒロポノス」という言葉がありまして、これから「ヒロポン」と名付けられたのです。
    これは大麻です。こちらは乾燥大麻でマリファナとか言われています。それから大麻草の樹液を固めたもの「ハッシシュ」「チョコ」と呼ばれています。ネットとか見たら、大麻は日本では禁止だけど、外国では合法なところがあるとの記載があり、「外国に行ったら大丈夫だ」と思っている人がいるのですが、実はそうではなくて、大麻取締法の罰則規定は、属人主義ということで、日本人ならどこでやっても罰せられるます。今年、未成年のスノボの選手が外国のコロラドでやったということで問題になりましたけど、外国でやってもダメということです。
    これは麻薬です。ケシの実から作りまして、ケシの実の樹液を固めたものがアヘンで、これを生成したものがモルヒネと言いまして、ご存じかもしれませんが、医療現場では鎮痛、鎮静剤として使われています。それをさらに生成したものがヘロイン。
  これはコカインです。アメリカの映画を見ていますと、ストローを使って鼻で吸うシーンを見られたこともあるかと思います。コカコーラのコカは、このコカなんですね。昔、20世紀の初めの頃までは、コカコーラにはコカ成分が入っていたのです。
  それから一番こっちの方は、合成麻薬と言われるのですけど、特にこのエクスタシー、MDMA、MDAと言われるもので錠剤形、カプセル形で注射器を使わず口から飲んで使うので、あまり罪悪感がなく若者に蔓延していると言われています。
    最後は危険ドラッグです。危険ドラッグは昔は合法ドラックとか脱法ドラックとか言われていましたけど、2014年7月に脱法ドラックから危険ドラックに名前が変わりました。危険ドラッグはなぜ危険かと言うと、使用することも危険なのですけど、中毒を起こして救急搬送された時に、麻薬、覚せい剤と違って成分がはっきり分からないので、治療の方法が確立していない。それで死亡例がたくさんあります。以前は店舗で販売されていました。祇園とか木屋町にも何店舗かありましたけど、今は全国からなくなりました。
    それから薬物事犯の検挙率なんですけど、覚せい剤が81.5%、大麻が15.5%で、2つで97%です。日本の薬物の問題は覚せい剤と大麻になります。
    これは、覚せい剤、大麻の年代別検挙人員、検挙率をお示ししたのですけど、青が覚せい剤、ピンクが大麻です。ご覧のとおり覚せい剤は40代が一番多いのですけど、30、50代と比較的年齢が高い人が多くて、大麻は年齢が比較的低い20代が一番多い。その次ぎに30代。そういう意味で大麻から始まって次はよりハードな覚せい剤に移る。
    大学生の大麻の検挙者率は、大学生10万人あたり1.2人ですので、京都の学生さんに割り戻しますと、だいたい2人。年間2人検挙されると計算されます。実際昨年、大学生が検挙されたのは2人です。今年の上半期は1人です。それから大麻で捕まった大学生がどういうことを供述しているかと言うと、動機は薬物に興味があったとか、友人に誘われたとか、海外で簡単に手に入ったとか、使用の場所は自宅、友人宅、それから大学構内、比較的身近な場所でやっていますので、大学構内でもよく見ておいて下さい。大麻は最近インターネットで随分販売されていますので注意していただきたい。
    たぶん皆さんは、「薬物なんか俺には関係がない」と思っていると思うんですけど、実際はそうではありません。「よし、薬物やるぞ。覚せい剤やるぞ。」と思ってやる人はほどんどいなくて、いつの間にか薬物に手を染めてしまったということなんです。友達から「疲れがとれるぞ」とか「頭がすっきりするぞ」、「楽に痩せられる」などと言って誘われます。そして、「仲間外れにされたら嫌だな」、「先輩から言われたのだから断れないな」。こうなるとついつい手を出してしまう。
 そういう事を勧めてくるのは、すでに友達ではありませんし、先輩でもないわけですからきっぱりと断ることが大切です。それから得体の知れない薬とかサプリメントは飲まない。「変わったタバコがあるので吸ってみては」と勧められたら、それは大麻かもしれませんし、危険ドラックかもしれませんから、絶対にそういうのは吸わない。それからインターネットの薬物販売サイトにはアクセスしない。それから皆さんプライベートや遠征などで海外に行かれることもあると思うのですが、東南アジアのほとんどの国が、薬物に関しては死刑の刑罰を設けています。中国では覚せい剤、それからヘロインを50グラム以上密輸をすると死刑の適用があります。皆さんそんなものを密輸しようと思ってないのですけど、実際にあった例なんですが、空港でおじいさんから「孫のお土産が多くなったから荷物を1つ持ってもらえませんか」と言われて預かった人が、空港の手荷物検査を受けて荷物から薬物が出てきて現行犯逮捕されたという事例があります。中国だったらひょっとしたら死刑判決を受けていたかもしれない。現実に日本人が2014年までに中国で5人死刑判決を受けて死刑になっています。私は昨年、タイとかフィリピンを仕事で回ったことがあったのですが、必ずスーツケースには鍵をかけます。物を盗まれないということもあるのですけど、変な物が混入しないように必ず鍵をかけて、ホテルに帰ったら必ずスーツケースの隅から隅まで見て変な物が入っていないか確認していました。皆さんも海外に行かれた時は十分注意をしていただきたいと思います。

 
 3 賭博事犯
 次ですが、賭博事犯。賭博と言ってもサイコロを使って「丁・半」というような賭博じゃないのです。ここで言うのは違法カジノ、闇カジノと言われるものです。あるいは野球賭博と言われるような身近な賭博です。
 野球賭博はいろいろと問題となりましたが、厳密に言いますと、皆さんがやっておられる競技の中で、「今日は勝った方が晩飯奢ってもらうぞ」、「負けたら晩飯奢らなあかんぞ」というもの賭博になるのです。ちょっと前に愛知県の消防署で賭け卓球をしていたと新聞にもテレビにも報道されたことがあったのです。匿名の投書があったというのでなので、クラブで勝った方が「晩飯奢るのだ」ということをやっていたとすると、それを聞きつけた人が投書することもあるのですから、どんな落とし穴があるかわからないと思います
    まず違法カジノ。これご存じのとおりバドミントンの金メダリスト候補が違法カジノに入っていて問題になって、リオ・オリンピックに出られなくなったことがありましたけど、日本では競馬とか競輪とかの一部の公営ギャンブルを除いては、賭博、ギャンブルは全部違法だということになっているのですが、実際は日本のあちこちの繁華街に、ラスベガスみたいなカジノを模した闇カジノ、違法カジノというものがあるのです。ほとんどがカードゲームのバカラ賭博です。私も1回マカオでやったことがあるのですけど、勝負が速くてスリルもありますし、一晩で10万、100万、1千万と使うこともあります。皆さんは「俺には関係ない」と思っているかもしれませんが、今年の6月に祇園で闇カジノを摘発しました。私も東山署の時に摘発してことがありましたが、いっぱいあります。怖いのは全部ヤクザが裏で糸を引いているのです。彼らはどこへでも触手を伸ばしてあらゆる機会を通じて皆さんをその場に引き込もうとする。それは、たとえばキャバクラかもしれませんし、ガールズバーかもしれませんし、居酒屋かもしれませんし、ゲームセンターかもしれませんが、そういう所で待ちかまえています。「面白い所があるよ」と言われて付いていったらそういう所だった。最初勝つのですが、調子に乗るとどんどん泥沼にはまって行くことになるわけです。
    もう一つ、オンラインカジノです。インターネットでオンラインカジノで検索したらいっぱい出てきます。そこへアクセスすると画面の向こう側に黒っぽい服を着たディーラーが出てきて、そこでバカラだとかルーレットをやるわけです。ネットを見ると「海外のサーバを経由していますから、日本の法律は適用にならない」、「合法ですよ」と言っている人もいるのですけど、とんでもない話で、今年の3月に京都府警察のサイバー犯罪対策課が、自宅のパソコンでオンラインカジノをやっていた顧客を単純賭博罪で逮捕しました。ですからこれからは、国内の自宅のパソコンでオンラインカジノをやっていても単純賭博で逮捕されるのだということを覚えておいてほしいと思います。
   4 性犯罪
 次は性犯罪です。大学のスポーツ選手による集団暴行とか強制わいせつが問題になっています。
    先程の一覧表の中から性犯罪に関するものだけを見てみました。これは4とか5とかのように、もともと「俺は性犯罪をやるんだ」と思ってやるような人は別として、ほとんどの場合がそんな感じじゃない。そんなことは犯罪にならないと思っていたのに、いつも間にか犯罪に発展するということがあるのです。
    それには2つの危険な要素があると思っています。1つは集団行事。コンパ、鍋パ、それから合宿です。2つ目は無理な飲酒です。一気飲みの強要、それから飲酒を伴うゲーム。こんなことが2つ重なると危険な要素はどんどん高くなるのです。その結果、どうなるか。遊び感覚、ノリ、クラブの伝統行事などと言って集団ではやし立てるうちにどんどん気分が高揚して、そして性犯罪に発展するということになるのです。ですから、たとえばマンションの一室であるとか、合宿先の旅館・ホテルの一室で、男女が一緒になって過度の飲酒をするということから発展する可能性が非常に高いということをよく認識してください。
   
5 暴行、傷害
 (1) 私的行為による暴行・傷

 それから暴行、傷害事件ですが、最初は私的な暴行・傷害です。2013年、サッカー元日本代表のMさんが、酒に酔ってタクシーの運転手を殴って現行犯逮捕されました。2011年、私が七条署勤務時代、バレーボールのVリーグの選手が酔っぱらってタクシーで無賃乗車して、駆けつけた警察官を殴って逮捕されるという事件がありました。その人はすぐにクラブを解任になりまして、出身地に帰られた。いずれも過度な飲酒が原因です。お酒を飲んだら何も分かりません。しかし刑事責任能力は否定されません。必ず有罪にされるので、先程の性犯罪も一緒ですけど、過度の飲酒には注意してください。
    (2) 部活動に伴う暴行・傷害
 それから練習中の体罰。殴る蹴るは論外なのですけど、そうでなくても長時間正座させるとか、あるいは長時間ランニングをさせるとかも体罰に当たるのです。体罰は死亡につながれば業務上過失致死とか、暴行とか傷害とかの刑罰法令に触れる。これは神奈川県川崎市でおこった事件なのですが、中学校の野球部の顧問が、長時間ノックの後に持久走をさせて部員が死亡したという事件なのですね。この方は業務上過失致死で罰金40万円の判決を受けました。もし先輩が後輩にこんな事をすると、多分、遺族の方は学校と先輩個人に対して損害賠償請求をするということになり、その先輩自身も刑罰法れに触れるということで、罰金あるいは懲役刑を受けるということになるのです。ですから「ついつい指導に力が入った」ということでは済まされない重要な案件になるということです。
    それから練習外における暴行・傷害です。練習外に「生活指導だ」っと言って寮で暴行するという事案ですが、1999年9月、東京の私立大学の剣道部の寮で1年生が洗濯物を干してなかったということで、4年生の先輩が正座をさせて、10回以上胸や腹を蹴った結果、死亡したという事件です。この事件で先輩は傷害致死で懲役3年の実刑判決を受けています。
  2つ目、アルコールハラスメント。下の例は体育会とは関係ないのですが、2008年の5月に静岡県浜松市でホストクラブの経営者が、ライバル店のホストに無理矢理お酒を飲ませて死亡させた事件で、傷害致死で懲役3年6ヶ月の刑を受けています。なぜこんな話をするかと言いますと、今までお酒を無理矢理飲ませて死んだ結果で、傷害致死を問われたという事例あまりはなかったのです。毎年、大学のコンパ、新入生歓迎コンパで未成年にお酒を飲ませて死亡したという事例を、新聞にも出てますからご存じかと思います。今までは損害賠償請求くらいで済んでいますが、これからはこういうことになって刑務所に入らなければならないということになるのです。たまたま2件とも傷害致死ですんでいるのですけど、最近世論はこうした行為に非常に厳しくなってますから未必の故意があるということで、殺人罪の適用もされるくらい厳しい事件になっていることを認識してください。
   
6 交通違反
  交通違反と言えば一番最初に頭に浮かぶのが飲酒運転です。泥酔して運転するのは論外なのですけど、飲酒運転にならないと思って運転したら飲酒運転になったという事例がたくさんあります。
  日本酒1合、ビール500ml缶1本、これ1単位ということですけど、体重60kgの人が1単位のお酒を飲んだら、醒めるのに4時間かかるのです。ですから前日の10時くらいまで友達と一緒に缶ビールロング缶3本飲んだら、12時間醒めないのです。翌日の10時までにバイク、自動車を運転したら飲酒運転になるということなんです。よくあるのは朝から友達と海水浴に行く。そして、ビールを飲む。それから泳ぐ。ビーチバレーをして汗をかく。「これだけ汗をかいたので、もう大丈夫だろう」と言って、車を運転して帰ってくるという事例。お酒は汗をかいてもほとんど醒めません。先程10時までにという話をしましたけど、睡眠を取ると余計に醒めません。起きている方がよく醒めます。皆さん1単位のお酒を飲むと、4時間はアルコールが醒めないということをよく覚えておいてほしいと思います。
    飲酒運転をするとどうなるか。酒酔い運転、0.25以上の酒気帯び運転は即免許取り消し。罰金は酒酔い運転では50万円位、酒気帯び運転では30万円位が相場と言われています。
   それからその他の交通違反もいっぱいあります。皆さんの中にもパトカーや白バイに止められた方がいらっしゃると思いますが、その時に大切なのは、絶対に逃げないということです。パトカーや白バイにはドライブレコーダーが付いています。ですから必ずナンバープレートから身元が割れます。たまたま写っていなくても、あちこちにいっぱい防犯カメラがありますから、必ず身元が割れるのです。割れたら必ず逮捕されます
 それともうひとつ怖いのは、逃げる時に交通事故を起こすことです。私は平成14年に西陣署で勤務していたのですけど、西大路通りを北行中の学生2人乗りのバイクが、一条通りを赤信号で左折したのです。ちょうど白梅町から来たパトカーが見つけて、サイレンを鳴らして追いかけました。その学生さん、一条通りをずっと馬代通りの方に行きまして、馬代通りの交差点を赤信号で突っ切りましたら、たまたま北の方から来たタクシーと衝突しまして、バイクを運転してた学生は即死です。後ろに乗っていた学生さんは重体でした。免許をとって1ヶ月でした。信号無視って反則金7,000円なのです。点数2点なのです。ですから絶対に逃げない。自分が死んでも大変ですし、逃げる途中に誰かをはねて死なせたら大変なことになります。失敗することは誰でもあることですから、失敗をどうカバーするかということが大切だと思います。
   
7 おわりに
 最後に、私はご紹介のとおり、警察学校長をやっていましたので、警察学校の学生に言った言葉なのですけど、この3つを守ってください。この3つはそんなに難しいことではないのですけど、この3つを守れば必ず社会でやっていけます。もちろん、学生生活、体育会の中でもやっていけます。
 @ 「時を守る」
 時間の約束を守る。集合時間に遅れない。提出は期日までにする。時間を守れない人は信頼を失います。
 A 「場を清める」
 掃除をすることです。先輩、後輩関係なくて、グランド、体育館、廊下にゴミがあれば、そこに腰をかがめてゴミを拾うということです。掃除をすることによって、「5つのK」を感じることができます。「気づく」、「素直な心」、「謙虚」、「感動」、「感謝」。先般、立命館大学体育会の学生さんが700人規模で京都駅周辺の清掃されました。大変素晴らしいことです。そして、皆さんはその活動を通じて「5つのK」を感じられたと思います。
 B 「礼を正す」
 難しいことではありません。挨拶と返事です。大きな声で明るく相手よりも先に「お早うございます」、「お疲れ様です」、「さよなら」と挨拶をする。それから何かを言われたら「はい」と大きな声で返事をする。
 この、「時を守る」、「場を清める」、「礼を正す」を是非実践していただきたいと思います。
 
 最後に1つだけお話しをさせてください。これを言いますと京都市役所出身の水田会長に怒られるかもしれませんけど、京都府警察は、皆さんのように体力強靱、頭脳明晰の優秀な人たちを待っています。先輩もたくさんいます。私が警察学校長の時、立命館大学出身の学生がたくさんいました。その人たちも待っていますので、是非、ご卒業後は京都府警察も進路の1つとして考えていただきますことを、最後にお願いしまして終わりたいと思います。
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