ホームへ

第9回「学生スポーツとコンプライアンス」講演会 

  
谷川 尚己
びわこ成蹊スポーツ大学
生涯スポーツ学科
学校スポーツコース教授
 2016年(平成28年)
9月17日(土)
立命館大学衣笠キャンパス 

薬物乱用防止の現状とアンチ・ドーピング
1 はじめに
 私は滋賀県内で小中高の教員をしていましたし、教育委員会にもいました。もともとは草津なので、草津の玉川小学校の教頭を4年間していたのですが、その時は立命館大学のBKC(びわこ草津キャンパス)の学生さんに大変お世話になりました。特に陸上部のインカレでベスト4くらいに入っている学生さんが来てくれて、子供達を指導してくれたりしました。草津市の保険体育課長をしていたこともあって、その時には立命館大学をお借りして、あのトラックをスタートに設定して、完成前の新名神高速道路を使った駅伝大会もしました。
  私は、特に保健科教育法を担当していまして、高中小学校の教員になりたい学生に対する講義を行っています。皆さん、中高校の保健の授業って覚えています? あまり覚えていないですね。でも保健の授業ってきちっとしなければならない。そういう授業ができる学生を送り出したいと講義しています。
   皆さんご存じですね。立命館出身のリオ五輪選手、たくさんおられるのです。
   ホッケー、セーリング、シンクロナイズドスイミング。シンクロナイズドスイミングの乾友紀子さんは滋賀県近江八幡市のご出身です。セーリングでは牧野幸雄選手と吉岡美帆選手のお二人が出場されました。
    その吉岡選手には、10月16日に彦根市で危険ドラック等薬物乱用防止啓発キャンペーンでお世話になります。立命館大学薬学部の学生さんとびわこ成蹊大学の薬物乱用防止サークルの学生とは、いろんなところで薬物乱用防止キャンペーンを行っていますけど、この10月16日にも行いますし、滋賀県内の11の大学の学生に呼びかけて、こんなこともしようと思っていますので、もしよければ彦根ですけどお越しいただければありがたいです。立命館大学のアメフト部の元監督・平井先生とリオ五輪5位の吉岡選手、さらにはバレーボールの北京五輪の日本代表の監督の3人にお越しいただいて、12時からドーピングについてのシンポジウムを行いますので、お越しいただければありがたいです。
    「12821」。これ何の数字ですか? 実は「12」と「8」と「21」なんです。リオ五輪における日本選手団の金・銀・銅のメダルの数なんです。素晴らしいですね。
 私はねんりんピックと言って60歳以上の大会のサッカーで金メダルを受賞しました。
   「学習指導要領」。生涯にわたって運動にたしなむ資質や能力。小学生では資質の基礎を築くというのが狙いなのです。いつもスポーツと繋げなさいと、そういう子供達を育てましょうと、それが学習指導要項の中の目標なのです。
   皆さんはどうですか? 指導者としてオリンピックを目指す、世界大会に出ること、他もどうですか。最近よく言われるのが支えるということ。ボランティアも1つのスポーツとしての関わり方かなと思います。
  2 医薬品について 
  薬教育て知っていますか? 薬の正しい飲み方ということが小学校、中学校の教科書に出てきます。薬教育とは薬物とは違うのです。
   人は自分で直そうという自然治癒力を持っているのですが、薬は積極的に応援するものです。自然治癒力を働きやすくするのが薬なのです。
   カプセル飲みます。胃を通って小腸を通じて肝臓へ入ります。血管の中に入って全身に回ります。
   これで始めて効果が発揮されるのです。ですから肝臓まで行くようにならないとダメなのです。コップ1枚位のたっぷりの水で飲むようにしてください。途中で止まって潰瘍ができると大変です。水なしでも飲める薬も出てきていますが、基本的にはたっぷりの水で飲むようにしてください。
   お昼に薬を飲み忘れました。どうしますか? 薬というのは効果が薄れてくると飲むようになっているのです。常に効き目が現れる範囲の設定されています。ところが飲み忘れたからといって飲むと危険な時がありますので、合わせて2回分飲まないようにしてください。
   薬と薬の相互作用もあります。薬と食べ物の相互作用というものもあります。納豆は体に良いとテレビで何年か前に放送されたのです。次の日、納豆が売り切れた。脳梗塞や心筋梗塞のおそれがあってワルファインという成分がある薬を飲んでいる人は、その成分は血液をサラサラにしようとする働きがあるのです。ところが納豆は血液を固めようとする働きがあるのです。だから納豆は基本的には体にいいと思うのですけど、そういった薬を飲んでいる人には相互作用を起こしてします可能性があるので注意してください。
   薬手帳を持っていますか? 成分とか全部書いてあります。もし副作用がおこった時にも、それが有効になってきます。救済制度を受けるためにも、レシートなんかも残しておく方がいいかなと思います。
   もし何かおかしいなという時は、お医者さん、薬剤師さんに相談してください。
  3 薬物乱用の現状 
  薬物乱用の現状ですが、先程、小林さんがお話しされたので、重なるところは省いていきたいと思います。
   この中で薬物とはどれでしょうか?
 これ全部なのですね。
   先程、ゲートウェードラックというものがありましたけど、お酒とかタバコを未成年からやっている人は、大麻や覚せい剤に手を出す人が多いです。そういうことからゲートウェードラック(入り口)と言っています。大麻や覚せい剤、特に大麻を経験した人は危険ドラックに手を出しています。
   薬物の定義とは、こんな風に中枢神経を興奮または抑制を来すものということです。
   薬物乱用については、お酒もタバコも正しくない使い方をすると、1回の使用でも乱用と言います。
   依存とは、薬物が止められなくなってしまうのです。「これ飲んだらすっきりするよ」、「仲間じゃないか」と勧められたら、なかなか断りにくいですよね。断れなくてやり始めて段々進んで行きますと、依存症になってしまう。そうする病院へ行かないと治らないのが現実です。もし、治ったと思ってもストレスやお酒を飲んだ時にまた出てくるのです。フラッシュバック、依存症がついてしまうと大変なことになります。一度の好奇心がら始まったものが一生闘っていかなければなりません。そういう状況になります。心も体も支配されるのです。
   依存に関する実験です。サルはここから血管をとおしていろんな薬を注入されます。気持ちがいいのでもう一度注入してほしくてレバーを叩きます。サルは何回レバーを叩くのでしょうか? 
   ニコチン、アルコール、麻薬、覚せい剤。
 実はこれでか叩きました
   これはネズミが懸垂したり重量挙げをしているのではなくて、この状態で動けなくなっているのです。
   これはビックリしました。5月17日、懲役2年6ヶ月の求刑。彼が立ち直れるかどうか、非常に厳しいと私は思っています。
  4 アンチ・ドーピング
  では、ドーピングについての話をします。
  ロシア国家主導、組織的なドーピング、IOCはロシアの参加を条件付きで認める。パラリンピックはリオへの参加不可。
  IOCとIPCの違い。こんなこと許していいのかと思いますけど、君らはどう思いますか?
  リオでは、重量挙げでかなりドーピングをやっているという報告があります。ロシアのドーピング問題をどう思いますか?
    最初のドーピングは、1911年、人間ではなくて馬で初めて検査をしたことです。それから1986年、これ、何の競技ですか? 世界ですごく人気の高いスポーツ。自転車競技なのです。自転車競技って世界的にメジャーなんです。このボルドーとパリの間は、600kmあるのです。京都からは東京を越えてさらに100km行く距離で、自転車競技をやっているのです。
    ドーピングの規定については、インターネットで出ますが、「禁止表」、国際基準というものがあるのです。これ毎年出されているのです。一番新しいもので2016年1月1日に出されていますので、それをネットで見ていただけるといいと思います。10項目については、今日お配りしたプリントを参考にしてくれるといいと思います。
    スポーツに参加するという条件として、6つの役割と責務があると言われています。ルールを理解してどこでも検査に対応する。検査に正確に正直に伝える。捜査に協力するというようなことが言われています。   
 
 
     致命的な有害事象が起こっても、おかしくない、そういう状況に至っています。
 ルール重視が大前提であるのに、自分だけスポーツマンシップに反してアンフェアーである。さらには、スポーツは文化だというふうに、みんなが言っているのだけど、なかなか文化として認められない現実があります。
 こういったことがなくなるということが大切だと思いますし、スポーツ固有の価値を損ねてしまいます。
 採取した尿や血液に禁止物質が存在していること、または、禁止物質を使用しようと企てることもそうです。検査を拒否すること、あるいは、ドーピングコントロールを妨害、または、妨害しようとする。居場所を明かさない。正当な理由なく持っていること。アスリートに対して使用または持つ、こんなことも10ありますので、これもネットで見てください。
   
       ドーピング違反をすればどうなるのか。個人の場合と2人以上の場合といろいろあるのですけど、ハンマー投げの室伏選手は銀メダルだったのですが、金メダルの選手がドーピング違反でメダルを剥奪されて金メダルになったということもありました。
 2年以上の資格停止とか、いろんな内容によってその処分は変わってきますが、特に今まで時効期限が8年だったのが10年だとか、より厳しく制裁が加えられています。
 
   
    禁止物質について、喘息薬の中にある、メプチンやシムビコート、これは使用してもどービングに引っかからないかどうか? ○か×で答えてください。
    成分によって引っかかるのとそうでないものがあるのです。吸入回数の制限がありまして、多いと引っかかる場合もあります。
    サプリメントも、特に外国製のサプリメントは要注意。エフェドリンというのは、中枢の興奮のための禁止物質というようなっていますので絶対に服用しない。OTCという医薬品の第二類も危ないということになります。
 筋肉増強系プリメント、それからプロテインはどうでしょうか?
    これはどうでしょう?
  これは、グレーなのですね。グリセリンという成分が引っかかる時があるので、グレーなんです。

    風邪薬はどうか? dl−メチルエフェドリン塩酸塩が入っていると引っかかります。ところがベンザブロックトローチは大丈夫です。
    体毛用薬、葛根湯、薬局に行った時に直接買えないものです。カウンターの後ろに置いてあって薬剤師から説明を受けないと買うことができません。ということは、それだけきついのです。
    他にも鎮痛剤、咳止め、胃腸薬、何度か同じ成分が出てきています。
 
 

    漢方薬でもマオウだとかホミカとかロクジョウ、これが引っかかる可能性が高いのです。
    サプリメントも、特に外国製のサプリメントは要注意。エフェドリンというのは、中枢の興奮のための禁止物質となっていますので絶対に服用しない。OTCという医薬品の第二類も危ないということになります。先程も言いました。
 
    漢方薬でも、このあたりは非常に危険性があります。覚えておいてください。
    サプリメントも自己責任で成分をしっかり見てください。
    でもわかりませんよね。2015年の国際基準の中に書いてありますので、確認をするのがいいと思います。ネットで閲覧できます。
  5 スポーツファーマシスト
  スポーツファーマシストという言葉を聞いたことがありますか?
  これは薬剤師のなかで、JADAが定める所定の課程を修了した人なのですね。

    この人たちは2003年の静岡での国体以来、ドーピングガイドを作成したりして、ドーピング検査を開始しました。京都府にもたくさんおられます。
   うっかりドーピングは、日本では多いと言われていますので、うっかり服用することのないようにしてください。
   そして薬を飲む場合は、特にスポーツドクターやスポーツファーマシストに聞くのがいいかと思います。
    これもJADAのホームページを開くと載っていますし、名前も出ています。京都では2012年で84人認定されています。どんどん増えていますので、聞くといいと思います。 
  ドーピング防止のガイドブックを見るなどしても分からない場合は、
  京都府薬剤師会、薬事保健センターへ問い合わせするといいと思います。
    一人一人の人生を表す言葉で、ひらがな6文字で言葉が隠されています。さあ、何でしょう?
 変ですね「ら行」がない。「し」がたくさんあるところに注目してほしいのですけど、「し」がありますが、ここは本来「た」ですよね。後ろから読んでいきます。ここは「さ」です。「た」と「さ」が全部「し」なんですね。「(た)から(さ)が(し)」(宝探し)
    皆さん、一人一人をお互いに認め合って、尊重し合い助け合い目標に向かって前進をしてください。
    3つは関連しています。
 異物は口の中に入れない、ということを薬教育で学べば、薬物1つも手を出さないでしょう。スポーツはルール、規則を守るという、そこが育っていればドーピングに対する正しい行動ができるのではないかと思っています。
     スポーツファーマシストに相談を。自身の体を大切に、自分の命は自分で守る。自分の力で目標に向かって邁進してください。
    「30」 これは何ですか? 
 2020東京オリンピックの金メダル目標数です。

    オリンピックのモットーは、より速くより高くより強く、プラスより美しく、より人間らしく。
 薬じゃないのです。ということを言ったのがドイツのハンス・レンクという哲学者です。

 そういう選手を君らは目標にして、オリンピックに出場してください
    「0」 これは東京オリンピック2020年を引き受けた数字なのですね。 日本人のオリンピックの薬物違反者は「0」なのです。日本が誇る精神。金メダル30もいいですけど、ドーピング違反者が世界でまだまだいるので、「0」になるのが大切かなと思っています。2020年、そんな東京五輪にできたらなと思っています。
    これは1964年の東京オリンピックの開会式です。2020年には、皆さんは選手で出るのかボランティアなのか。それでもごろ寝して応援するのかな。楽しみですね。
  ホームへ